目次
新型コロナウイルスの流行により、会場で一斉に試験を実施することは難しくなりました。IBTはその問題を解消できる方法として注目されています。これはコロナ禍でも有効な試験方式なのですが、まだ詳しく把握していない事業者も少なくありません。
導入に向けて正しい知識を得られるように、本記事ではIBTがどのようなものか紹介します。CBTやPBTとの相違点も挙げ、カンニングの防止方法なども解説するのでチェックしておきましょう。
1.IBTはインターネットを利用した試験方法
IBTとは「Internet Based Testing」の頭文字を連ねた略称で、その名のとおりインターネットを活用した試験方式を指しています。そういわれると、オンライン試験やWeb試験との違いが分からないと思う人もいるでしょう。これら3つには明確な差はないため、実質的に同じものだと理解しても問題はありません。IBTはさまざまな目的の試験に利用されており、例えば英語の検定試験などで利用されています。なお、IBTが日本で注目され始めたのは2000年代です。それ以降、採用する団体や企業が多くなり、すでに情報化社会における試験の定番スタイルになっています。
通常のIBTは、各受験者が所有しているパソコンやスマートフォン、タブレットPCなどで受けられます。つまり、マルチプラットフォームに対応しており、異なるインターネット端末を利用できることが特徴です。したがって、インターネット環境さえあれば、時と場所を選ばずに受験できます。自宅で行えるので試験会場が不要であり、受験者数に制限を設ける必要もありません。このように、とても自由度が高い試験方法として人気があります。
2.IBTとCBTとの違い
CBTはIBTとよく混同や比較をされる試験方法です。こちらの正式名称は「Computer Based Testing」であり、IBTとの共通点はコンピュータを利用することです。IBTとは異なり、CBTはインターネットを使うとは限りません。しかし、その点よりも受験を実施する方法や場所によって区別されることが一般的です。自宅で個別に受けられるIBTに対し、CBTは試験会場で一斉に受ける仕組みとなっています。それらの試験会場はテストセンターと呼ばれており、問題を解くために使用するのは運営側が用意したコンピュータです。
試験会場では本人確認が行われ、受験中は試験監督者による監視もあります。そのため、CBTは不正行為を防ぎやすく、厳格性を維持できることが大きな特徴です。自宅受験のIBTは受験者にとって非常に便利ですが、運営側にとっては対面での本人確認や監視を行えないというリスクがあります。カンニングや替え玉受験などの防止については、本人のモラルに依存しがちであることが実情です。
3.IBTとPBTとの違い
「Paper Based Testing」の略称であるPBTも、IBTと比べられることが多いです。こちらは従来型の試験方法で、使用するのは紙ベースの問題冊子と解答用紙です。PBTはマークシート方式が主流となっており、すべてを電子的に処理する試験方法より採点に時間がかかります。解答用紙を回収して一括で採点を進めるため、基本的には結果をすぐに出せません。一方で記述式を出題できるという特徴もあり、問題作成に関する自由度は高いです。特別なシステムを構築する必要がなく、インターネット環境も不要となっています。また、受験生が端末操作に慣れていない場合、筆記具で答えるPBTのほうが選ばれやすいこともポイントです。
PBTは試験会場を設けて1カ所もしくは複数会場で一斉に行います。そのため、運用コストが高く、問題作成や人員確保の負担が大きい点に要注意です。このような事情により、年間の試験回数を少なくする傾向が見受けられます。
4.CBT・PBTと比較したIBTのメリット・デメリット
インターネットを活用できる点において、IBTにはCBTやPBTにはない長所があります。ただし、自宅で自由に受験できることは、短所にもなりうるので気を付けなければなりません。CBTやPBTとの比較を通して、IBTのメリットとデメリットを以下に挙げていきます。
4-1.IBTのメリット
CBTやPBTとは異なり、IBTは試験会場を訪れる必要がありません。新型コロナウイルスの感染拡大防止という観点において、これはとても大きな意義があることです。集団受験で生じる密の回避は、受験者と運営者のどちらにもメリットがあります。また、現代はライフスタイルが多様化しているので、個別に受けられるIBTは受験者各自の都合にマッチしやすく、スケジュールを自分の予定に合わせられる点でも多くの受験者に歓迎されています。
試験後にすぐ採点が実施され、その場にいる受験者に結果を提示できることもIBTのメリットです。なおインターネット環境があれば誰でも試験を受けられるので、受験場所の制約がなく、世界中の人々に試験を受けてもらうことも可能です。
4-2.IBTのデメリット
IBTでは、受験者のインターネット環境や端末状況が試験に影響するケースもあります。全受験者の条件を同一にできるCBTやPBTとは異なり、受験環境の公平性に関して課題が残っている状況です。また、インターネットを利用する仕組みなので、IBTは何人でも受験できる一方、サーバーへの負荷には注意が必要です。サーバーダウンなどのリスクを考慮し、同時接続人数に上限を設けることも必要になってきます。
さらに、厳格性について課題がある点にも気を付けましょう。一般的に試験官による監視がないため、問題漏えいやカンニング、替え玉受験といった不正の可能性を念頭に置き、それらが行われることを前提とした対策が必要になります。IT機器を使い慣れていない人への配慮として、直感的に使えるUIやシンプルな操作方法であることも重要なポイントです。以上のデメリットがあるため、高い公平性と厳格性が必須となる資格試験などには、採用しにくいという現状があります。
5.IBTにおけるカンニングなどの不正防止方法
最も問題になりやすい不正としてカンニングが挙げられます。自宅というプライベート空間で受験できるので、運営側が完全にカンニングを防ぐことは困難です。たとえば、試験に使っている端末とは別にもう1台端末を準備し、そちらで解答を検索するという手口があります。関連書籍を手元において解答を調べることもカンニングの代表的な方法です。それらのカンニング対策としては、Webカメラによる受験者の撮影や録画が効果的です。目線や顔の動きなどをAIが検出し、不審な点がないか判定するという仕組みで、この判定で抽出した受験者だけを目視で確認するという方法であれば、チェック作業を担当するスタッフの負担は軽くなります。
Webカメラは替え玉受験の対策にも有効です。顔写真付きの身分証を受験前に提示させ、受験者が本人かどうか確認できます。
6.IBTの活用事例
会場試験の実施は運営者と受験者の双方に新型コロナウイルスの影響によるリスクがあり、昨今は自宅で受験できるIBTのニーズが高まってきました。前述のように、現状のIBTには公平性や厳格性に関する課題がありますが、一方で利用しやすいケースがあることも事実です。ここではIBTの強みに焦点を当てて、IBTの活用事例などを紹介していきます。
6-1.適性試験や模擬試験として採用
適性検査など、実施する試験の結果が合否などに直結しない場合はIBTを積極的に導入すると良いでしょう。新卒や中途採用における適性試験に向いており、能力検査や性格検査などに使わることがよくあります。これらは自己分析や相互理解の意味合いが強く、不正行為をしても大した恩恵を得られません。解答が変わっても採用の合否にあまり影響がないので、IBTを利用しやすいというわけです。このようにIBTのリスクが小さくて利便性が優先される点は、実力を測ることを目的とした模擬試験なども同様となっています。
上記の試験においても、カンニングの防止が運営の重要な役割であることは変わりません。とはいえ、もし防げなかったとしても実質的な被害は小さいことが多いです。なお、基本的な対策として、カンニングをする余裕がないほど、制限時間を短くしたり問題数を増やしたりすることが挙げられます。
6-2.人事評価や研修などの社内テストとして使用
新型コロナウイルスの影響で、社内試験制度をうまく運用できていない企業もあります。その場合の対策として、試験方法をPBTやCBTからIBTに変更しようと考えるケースも珍しくありません。実施した場合、カンニングのリスクが高まるので別途対策が必要になります。一方、IBTにはテレワークと相性が良いという利点もあり、受験しやすくなったと感じる従業員が多いです。また、e-ラーニングは社内教育用のツールとしてよく利用されています。それらをIBTに置き換えたり、両方を併用したりすることも有効です。
たとえば、単純に研修動画を視聴させるより、IBTのテストも実施したほうが学習効果のアップを見込めます。間違えたところを重点的に復習することで知識の定着を見込めるからです。自分の理解度の点数化によって、実力を客観視して次の目標を設定しやすくなります。
6-3.IBT試験運営代行事業者を選定する際のポイント
IBTをアウトソーシングしたい場合は、十分な理解と実績がある事業者を選択することが基本です。インターネットで受験する形式であるため、従来とは試験の運用方法が大きく異なります。そのノウハウを保有しているだけでなく、全国で試験を実施できる万全の体制を有していることも重要です。さらに、IBTを最大限に活かしたいなら、幅広い種類の試験に対応できるスキルも欠かせません。インターネット経由で不正をチェックするため、試験監督者の技量も優れている必要があります。また、状況に応じてCBTへ切り替える可能性があるなら、 試験会場を柔軟に用意できるところが良いでしょう。
6-4.IBTではなくCBTを採用することもおすすめ
公平な受験環境の担保や、カンニングや替え玉受験への対策に課題が残るIBTのデメリットなどを考慮し、試験会場で一斉に受験するCBTを採用するのも手段のひとつです。その運営代行を委託したいなら、安心して任せられる事業者を選ぶことが大事です。CBTによる試験の運営を熟知している点や、実績が十分である点を確認しなければなりません。受験者を幅広く募りたいなら、全国対応をしているか調べることも必要になります。さらに、担当できる試験の種類や試験監督員のクオリティも選択における大切な基準です。スムーズに試験会場を手配してくれることなどもポイントになります。
IBT試験の運営代行・委託を検討してみよう
IBTはオンラインの試験方法であり、受験者の端末で受けられることが特徴です。利便性が高い一方で、カンニングなどの不正対策に課題があります。コロナ禍で需要が伸び、社内試験に使う企業も増えました。ニーヴの試験運営アウトソーシングサービスは、多様な試験や受験方式に対応が可能です。オンライン試験の監督業務に特化した日本初の試験監督センターも運営しています。IBTの運営代行や委託を検討中なら問い合わせてみましょう。